COAST Bordeaux 2017
テーマ:問題解決の為の知見蓄積、
そのためのシンポジウム及びフォーラム開催
本国際シンポジウムのメインテーマ
– 海洋・沿岸環境におけるシステム変化、並びにその生物学的多様性
– 自然要因及び地域人的活動による気候変動の影響
気候変動要因の特定及び分析
沿岸・河口環境は生産性の高い生態系であり、かつ海洋及び流域環境との結びつきが強い。そのため世界的気候変動、並びに地域別人的活動による影響を受けている。本シンポジウムのテーマの一つはこれら気候変動要因を特定、量化、分析を行うことである。いずれも地球規模から地域規模に沿って、気候変動における潜在的・個別・共役的効果を見積もるものである。
社会生態系、生物学的資源への影響
海面上昇、暴風雨や津波といった不意の自然災害到来、人的活動の影響により沿岸地域は侵食を受け、極度な脆弱状態にある。そのうえ沿岸生態系は、海水の温暖化及び物理的、化学的、生物学的な特性変化(温暖化・海洋侵食・酸性化)の影響を被っている。さらそこは時に多くの化学的・生物学的汚染源の集積場となり、地球及び地域規模での環境変化を引き起こしている。またそれにより生態系汚染が進み、同時に海洋生物の広域に渡る充実度、その多様性による回復能力と環境保護役割の大幅な減少を招いている。本シンポジウムのもう一つのテーマとしては、異なる時間軸・空間軸、異なる複雑さのレベルで、生物学的資源とその社会生態系への影響に関する分析及び量化の実施を掲げている。
沿岸生態系の 脆弱 性、またそのリスク
急激な変化の状況において、人間社会は緩和に向けた未来活動に対する疑問を投げかけている。つまりは環境変化とそれによる抑圧要因を減らすこと、または順応すること、また現在の影響による抑制を単純に同化することが挙げられる。すなわち特に異なる空 間軸・時間軸で累積した環境抑圧要因におけるそれぞれ の関係を特定し、さらに理解すること、それらの現在また潜在的影響の追求、つまりは不測の事態における可能性、脆弱性、リスクに関して 生物学的多様性並びにその社会生態系、二つの面からの分析を行うことである。
各生態系修復のためのアプローチとそのプロセス
水の枠組指令、海洋戦略枠組指令、直近の海洋空間計画のための枠組指令といったEU枠組指令によって、陸上・河口・沿岸全ての地域における水質調査が可能となり、また人的活動による影響を測ること、海岸から排他的経済水域の間における海洋利用を通した共同政策の実現が合わせて可能となっている。これらの指令は科学的かつ学際的研究を根拠としており、総合的生態系へのアプローチにおいて、沿岸における海洋学の実用性を予示している。また海洋・沿岸総合管理、それに関わる政策決定の推進をさらにその目的としている。
テーマに関する意見交換:
本シンポジウムは「気候変動、自然災害による不測の事態、人的活動による脆弱性」という基軸において展開され、主にフランスと日本における科学関連団体及び企業が参加、また運営は日仏海洋学会によるものである。
問い1:海岸線変化だけではなく、沿岸での自然災害頻発及びその強力化に順応するために、社会生態系の回復能力を今後どのように高めていくべきか。
一般的に沿岸地域は極度に搾取された生態系によって成り立っている。沿岸地域だけで地球表面のおおよそ2%を占めるが、そこには世界人口の10%にあたる人々が所謂低地帯で暮らしている。また津波、洪水、海水侵入、サイクロンといった自然災害による脆弱性も目立っており、広範囲に渡り環境や社会的、経済的打撃とともに、かなりの物質的被害や多数の人命損失が引き起こされている。海洋産物の生産国トップを誇る日本は特に生産性の高い海に四方を囲まれ、沿岸地域は都市化されているとはいえ、頻発する自然災害と対峙しつつも、海洋沿岸経済におけるその重要な立場を守ることに成功している。またその立場から、海洋分野におけるフランスを始めヨーロッパの科学者並びに関連企業との共同研究の着手という点で有利な位置を得ている。
問い2:異なる海洋利用による影響連鎖を抑え、また気候変動要因に順応するための沿岸境界地域における総合的管理、並びにそのアプローチをどのように実施すべきか。
水温上昇と関連し、沿岸(及び湾低層)域では生体の増加が見られる。それにより、沿岸漁での重要な経済資源の一つを成す生体の生産性が弱まり、同時に水産養殖や観光業発展を妨げる伝染病の頻度が上昇している。海水の酸性化はまた貝類や甲殻類の成長、さらに広くは栄養連鎖の特殊な構成にまで直接的な影響を及ぼす可能性があるとされている。
問い3:共同海洋利用をいかに実現するか、並びに世界的な変化の状況において海洋空間の新しい利用方法を前に、伝統的な漁や養殖業をいかに保護するか。この目的において、海洋空間戦略計画アプローチにおける意思決定のための協議プロセスをどのように実行すべきか。
フランスさらにヨーロッパにおけるブルーエネルギー開発は、エネルギー移行政策において、海洋空間の異なる利用方法を作り出し、生態系の有効性を測っている。環境と資源を同時に守ることを目的とした保護海洋域の設定は特に、ヌーヴェルアキテーヌ地方やアルカッション流域、並びにジロンド河口・ペルテュイ海での海洋自然公園の設置という形で表されており、海洋空間戦略枠組指令の実行に同時に寄与している。
問い4:総合的海洋戦略において、海洋沿岸の総合的管理へのアプローチを段階的に共同作成するために、伝統的な共同管理方法に対しどのように基づくべきか。
総合的アプローチと広範囲における生息地修復プログラムの実施は、全ての要因を組み入れつつ、日本においては既に以前から定着している概念であり、それは地域の発展に基づくものである。その証拠として以前の「里山」から派生して「里海」という考えが存在する。この二つの概念は、自然と文化における強い結びつきを連想させるとともに、そこには栄養資源及び文化資源の構成要素である空間に対する継続的な研究が存在する。ヨーロッパの中でもとりわけフランスにおいても、特に小規模漁業において、これと同様の概念に沿った実践が以前より行われている。